不確定性原理

2012/01/16 4:24 に Tohru Takahashi が投稿

この文を書くにあたって,原論文は読んでいません。報道に触発された私の随想です。

 

 

2012年1月16日に,ハイゼンベルグの不確定性原理を破れを実験的に見つけたとの報道がありました。

日経サイエンスの記事がここにあります。とても分かりやすい記事だと思います。正確には小澤の不等式を証明したとのことです。どういうことなのか考えてみました。

 

量子力学を学び始めるとすぐに,不確定性原理というのを習います。粒子の位置xと運動量pの間にはδxδp≧h/4pi関係があるため,位置と運動量の両方を同時に無限に良い精度で知ることはできないと言う意味です。またエネルギーと時間にもδEδt≧h/4piという同じような関係があることが出てきます。

量子力学の教科書では,この不確定性を位置と運動量の測定に関連して習うことがよくあります。でも,不確定性というのは,古典的な波動にもあります。具体的にはこんな感じです。

 

波のエネルギー(すなわち振動数)と時間の関係を考えてみます。振動数というのは,波が1秒あたりに何回振動するかと言うことです。これを精度良く測定するためには,振動の回数を長い時間にわたって数える必要があります。すると「波の到着時刻」という情報を得ることはできません。同ことが,位置と運動量(これは波数に対応します)にも言えます。波数は単位長さあたりの波(波頭)の数ですので,これを精度良く数えるためには,長い距離に波がいくつあるか数えなければなりません。すると,その波がどこにあるのかということは意味が無くなります。波の位置と運動量やエネルギーと時間の関係に不確定性があることが分かります。この不確定性は,電磁波や水の波でも同じことが言えます。波であれば同じ考察ができるし,それにどのような測定をしたかが問題となります。

 

量子力学の場合も測定と関連した不確定性を考えることができます。教科書にもハイゼンベルグが行った思考実験としてよく紹介されています。粒子の位置を観測するためには,測定という操作を行わなければなりません。たとえば電子に光をあててその散乱から電子の位置を測定することができます。その場合光をあてるという測定の操作によって電子の運動量が乱されます。これを注意深く考察するとδxδt≧h/4piという不確定性関係を導くことができます。

 

一方量子力学では,二つの演算子の間の交換関係というものをを習います。位置と運動量の演算子X,P(演算子であることを表すために大文字で書きました)にはXP-PX=h/4piが成り立ちます(これを[X,P]=h/4piと書きます)。実はこれから少し計算すると,位置と運動量の間にδXδP≧h/4piという関係を導くことができるのです(量子力学の練習問題でよくやります。)。これは先ほどの波の振動数や数を数えた測定や光の散乱で電子の位置を測定した時の不確定性とは意味が違います。この場合,測定の結果は完全に量子力学的な操作で,その結果は状態(波動関数)の性質で決まっています。すなわち,[X,P]=h/4piからでてくる不確定性は測定とは関係がない量子力学固有のものです。

 

これから,測定という行為によって導入される不確定性と量子力学が固有にもつ不確定性は分けて考えなければならないことが分かります。小澤の不等式というのは,このことを考慮して,測定による不確定性と,量子力学固有の効果の両方現れる実際の測定(すなわち実験)の場合の不確定性原理を表したものなのでしょうね。

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