名目リスクってなに?

2011/04/27 21:44 に Tohru Takahashi が投稿   [ 2011/06/18 16:36 に更新しました ]
 
低線量放射線によるガンのリスクについて,調べている。
 
よく言われているのは「致死的なガンにかかる確率は0.05/Sv」,これは国際放射線防護委員会(ICRP)の出している値。
しかし,調べてみると,大人と子供では異なるとか,放射線影響研究所(放影研)の研究結果では違う値になっているとか
いろいろあって混乱する。そこで少し調べてみた。

よく聞くのは100mSv以下の被ばくの場合致死的なガンにかかる確率は0.05/Svという事である。
しかしICRPの文書(ICRP103)を読むと確率とは書いていない。「リスクまたはリスク係数」である。

        リスクの影響を受けた人の数    
 リスク = ーーーーーーーーーーーーーー 
        リスクの要因を受けた人の数                  

なので今の場合は

        放射線の影響によってガンで亡くなった人の数
リスク=   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
              放射線を浴びたひとの数

 0.05/Svというのは,10万人が0.1Sv(100mSv)被ばくしたらその影響で500人がガンで亡くなると言う意味。

しかし,ICRPの文書をよむと最新の文書(ICRP103)では
名目リスク係数= detriment-adjusted risk coefficients 
なるものが使われており,リスクは参考値という取り扱いをされている。 

名目リスク係数とは何だろう。
ICRPによるとガンにかかると,致死的でなくても生活上の損失を被るという考えから,それも考慮にいれた
リスクを定義すると言うことである。
具体的には

 致死的ガンになるリスク + ガンの影響係数×致死的でないガンのリスク

となっている。またガンの影響係数は 

(1-qmin)×q+qmin

qはガンの発症数に対する致死的なガンの割合。 qminはガンの発症に対して一律に使う定数。
つまり,ガンを発症するだけて生活はqmin損なわれる,また結果的に致死的でなくてもそれが致死率の係数分だけ生活を損なう。
というような考え方のようだ。
CIRP103では qmin=0.1, qはガンの部位によっており,胃ガンは0.83,肝臓ガンは0.95,皮膚ガンは0.002などとなっている。
これらをいろいろな部位で計算して加えたものがICRP103にのっている。
まとめると

 名目リスク係数     1シーベルトあたり
   すべての年齢   0.055
   大人         0.041

また補足のような形で 致死的ガンののリスクは5%/Svは世界的に放射線安全の観点からよく使われており妥当な値であると
書かれている。


放射線影響研究所の結果をもとにした数値をHPなどでみることがある。ICRPのものとは異なっているが,比較には注意が必要である。

    ・放影研の値を参照する場合,それが上記のリスクか,相対値(相対リスク)なのか注意が必要。
     相対リスクが5%高くなるというのは,ガンになる人の数が放射線の影挙を受けない場合の1.05倍
     になると言う意味。ICRPの絶対リスクとは異なる。(放医研のHPでは相対リスクも多く使われている。)

    ・致死的,非致死的の区別はどうなっているか。放影研のHPの数字はガンの発症数(致死的,非致死的の区別はない)

ICRPと放影研の値を比較する場合,リスクの定義がどうなっているか注意する必要がある。
数字をそのまま比較することはできない。






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